今時のビジネス書に見る、ゆとりが知的生産を増やすという考え方
10月 5th, 2008最近は、企画のためと個人的な興味から、ビジネス書、中でも知的生産関連の書籍をよく読むようになった。人気の書籍に共通するのは、知的生産向上の目的はゆとりを増やすためであり、ゆとりを増やすことでいっそうの知的生産向上を図るという考え方だろう。
従来は、
・とにかく多くの情報を仕入れて、有利なポジジョンを取る
・長時間働くことで、収入を増やせる
といった考え方が一般的だったのではなかろうか。
しかし、現在この考え方はもはや成立しない。
・ネットによって知識はすぐに共有されるため、情報の価値が相対的に下落(逆に、自身のリアルな体験は希少価値が上がっている)
・長時間働くことで収入を増やせたのは、経済全体が右肩上がりだったから
・いくら長時間働いても、他と差別化できなければ得られる利益は下がる
で、そのために頭を使って他人とは違うことを考え、利益を上げる必要がある。頭を使うには、しっかり休んで考える時間を作る必要があると。和田秀樹氏の『休暇力』(2004年8月刊)は、比較的早い時期にこの考え方を提唱していたと思うが、その当時の私は「そんなうまい話はないだろう」と思っており、正直ピンと来なかった(笑)。
ゆとりの重要性を説く最近の書籍のうち、印象的だったものをいくつかピックアップしてみる。
・『天才の時間』(竹内薫、エヌティティ出版)
天才と呼ばれる人々が偉大な業績を上げる前には、必ず充実した「休暇」(失業や左遷なども含めて)の期間があるという。取り上げられているのは天才達のエピソードだが、凡人にも応用できそうな話が少なくない。研究費が多い割に東大からあまりノーベル賞受賞者が出ていないのは、雑務に忙殺されているからではないかという推測が面白い。
・『「残業ゼロ」の人生力』(吉越浩一郎、日本能率協会マネジメント 出版情報事業)
トリンプ元社長による、「残業ゼロ」で豊かな人生を送るための方法。残業によって、日本は年間12兆円の損失を被っているという。吉越氏は充実した「本生」の人生を送るために、伴侶が重要だとそれはもう何度も語る。ある意味、微笑ましいノロケ本と言えなくもない(笑)。
・『勝間式「利益の方程式」』(勝間和代、東洋経済新報社)
「利益の方程式」などというから、もっとガツガツした金儲けの本を想像していたのだが……。利益を追求する目的は、無理な働き方をせず、ワークライフバランスを取ることにあるという。儲ける目的とその方法論をここまで明確にした書籍というのは、ほかにないかもしれない。
・『弾言 成功する人生とバランスシートの使い方』(小飼弾・山路達也、アスペクト)
最後は、宣伝ついでに『弾言』の紹介。この本でも口を酸っぱくして説いているのが、時間の重要性。もらうカネが少なくなってもいいから時間を作れ、そしてその時間を有効活用しろというのが、『弾言』第1章の趣旨だ。詳細は、こちらの目次と書評リストを参考いただきたい。