オンライン申請で会社を設立すると45,000円もオトク!……だけどトラップ多し(その3)
6月 16th, 2009その2からの続き。
○法人登記のオンライン申請はオンラインじゃなくて半ライン
法人登記のオンライン申請は、とっても中途半端だ。「設立登記申請書」は、専用の登記申請書作成支援ソフトウェアで行い、オンライン申請システムから申請する。しかし、定款や払込証明書、取締役の決議書、就任承諾書などの添付書類は、別途法務局に持ち込むか郵送する。……これって、業務の効率化になっているのかね?
○お上は、どうしても5,000円マケたくないらしい
さて、登記申請書を作るには、「登記申請書作成支援ソフトウェア」で新規作成を選び、各項目を入力していく。ここでちゃんと5,000円安く上げるために注意しないといけないのが、「登録免許税」の項目だ。
設立登記の登録免許税は、原則として資本金の0.7%なのだが、その額が15万円未満の時は15万円になる。ようするに、資本金が二千何百万円以上というのでないなら、登録免許税は15万円ということ。で、オンライン申請だから、5,000円引かれて14万5,000円になると。
しかし、登記申請書作成支援ソフトウェアの「登録免許税」の項目は、標準だと「課税(軽減処置なし)」になっている! ここを「非課税又は軽減措置」にしないと、5,000円安くならないのだ。登記申請書作成支援ソフトウェアを使うのは、オンライン申請するためじゃないの?
さらに極悪なことに、軽減措置の根拠を入力しないといけないが、そんなの知るわけない! 法務局に電話して尋ねると、数分待たされたあと、「租税特別措置法第84条5第2号です」と教えられた。法務局の人もしばらく調べないとわからないなんて……。期間限定の法律ならソフトウェア上に表示できないのは百歩譲って仕方ないにしても、オンライン申請システムのページでもっと大きく謳うべきだろう。
この条文を入力して、さあ完了と思ったら「全角以外の文字が含まれています」。全角かどうか判別できるのに、今時どうして数字の全角半角変換くらいやってくれないんだ……?
「ですがね、いちおう告知はしてあったわけでしょ?」
「してあったよ」とアーサー。「もちろんしてあったさ。鍵のかかったファイリング・キャビネットの一番底に貼り出してあったよ。しかもそのキャビネットは使用禁止のトイレのなかに突っ込んであって、ごていねいにもトイレのドアには『ヒョウに注意』と貼り紙がしてあった。」(『銀河ヒッチハイク・ガイド』(ダグラス・アダムス、安原和見訳、河出書房新社))
○税金が無駄遣いされている現状を知るためにも、オンライン申請にチャレンジしてみては
オンライン申請が完了したら、添付書類を法務局へ送る。私は不安だったので、自分で法務局に持ち込んだ。ほんと、何のためのオンライン申請システムかわからないけど。添付書類まで全部揃って、ようやく審査開始。窓口の職員には、1週間かかると言われたが、中2日で審査完了の連絡が来た。オンライン申請だと処理が速いのかもしれない。これで株式会社がようやく設立できた(このあと、税務署とか銀行とかいろいろ手続きはあるけど割愛)。
それにしても、オンライン申請システムの使いづらさには呆れるばかり。ふつーの人がオンライン申請をするなんて、これっぽちも考えていない作りになっているのだ。
もしかしたら、厳密に認証を行わなければならない手続きもあるのかもしれない。しかし、登記申請なんて、結局法務局に足を運んだり郵送したりしなきゃならんのに、ここまで厳密な認証システムがどうして必要なのか、さっぱり理解できない。ユーザーインターフェイスも一体いつの時代の設計だ?
このために何百億円、何千億円といった税金が使われているのかと思うと、45,000円浮いたとは言え、もうやりきれない気分だ。役所関連のオンライン申請がもっとシンプルになるだけでも、いろいろなビジネスがスピードアップしたり低コスト化して、経済活性につながると思うのだけどね。