自動組版のセミナーに参加してきた
10月 20th, 2005JAGAT(日本印刷技術協会)が主催する「紙面制作の自動化とページデザイン」のセミナーに参加してきた。PCJapan用語辞典のワークフロー作りをお手伝いしたということで、無理を言ってタダで(←ここ重要(笑))聴講させてもらったのだ。
このワークフローについて簡単に述べておこう。ハッカー用語辞典2004まではMac OS 9+QuarkXPressの環境だったが、PCJapan用語辞典2005からはDTPプロダクションのビーワークスと話し合ってInDesignを使ってもらうことにした。私の立場からの理由は2つ。XMLとUnicodeである。
PCJapan用語辞典の制作ではデジタル版(WindowsのHTML Help形式)を作るためにDTPデータを再利用したい。そのために、XMLでデータをやり取りできれば作業がスムーズに行くと考えた。
ライターから集まってきた原稿は私が編集して、Excelデータとしてビーワークスに渡す。ビーワークスはExcelからXMLデータを書き出し、それを同社独自開発のスクリプトを使ってInDesign用XMLに変換、InDesignに読み込む。この時点で見出しには見出しの、本文には本文のスタイルが適用されている。テキストを選択してスタイルを手動で適用する必要がないため、ビーワークスでの組版作業の手間は半分以下になったという。
用語辞典のデジタル版を作る際は、ビーワークスがInDesignからXMLを書き出し、私がExcelに読み込む。見出しや本文、関連用語など項目別にきちんと分かれて読み込まれるから、実に再利用しやすい。文字コードをUnicodeに統一することで、WindowsやMacの機種依存文字に悩まされることもない。
データの再利用を考えて、いくつか注意している点もある。例えば、上付文字、下付文字はDTPソフト側の機能を使うのではなく、(テキストデータの段階から)Unicodeに用意されている文字で表現するようにする。特殊なフォントを使う記号はできる限り避ける。(DTPソフト上で)字詰めを調整するためにスペースや改行を入れるのは避ける、等々。こうしておくことで、紙の用語辞典と同じテキストデータを可能な限り再利用できる。
まあ、現時点でHTML Helpを作るためのオーサリングツールがUTF-8に対応していないため、結局Unicodeにしかない記号は手作業で置き換えているのだけど。
DTPの話からちょっと外れるが、編集でのExcel利用について。テキストデータをExcelデータで渡すということに、抵抗を感じる人もいるかもしれない。テキストの編集作業にExcelなんか使えないだろうと。
もちろん、文章をガリガリ入力・編集するのにExcelではまったく力不足だ。テキスト編集にはテキストエディタ(ワープロでもいいが)を使う。この時、見出しは行頭に「■」を付けるとか、自分なりのルールを作ってそれをきっちり守るのがミソ。このように規則性のあるテキストデータは、PerlやRubyなどのスクリプト言語を使って簡単に処理できる(HTMLなどのマークアップ言語を使う手もあるが、テキスト編集作業が面倒になるために自分ルールでやっている)。私の場合は、RubyからActiveXオートメーションでExcelをコントロールし、テキストファイルからExcelシートを生成するようにしている。Excelデータになると、読み順に並べ替えたりといった処理もすばやく行える。また、独自スクリプトを使って、この時点で関連用語の飛び先チェックも行うようにしている。いったんExcelデータになったデータを再度テキストエディタで編集したくなったら、先ほどと逆の処理を行うスクリプトでテキストデータを吐き出せばいい。同一データを相互変換できるわけではないが、テキストエディタとExcelの間でコピー&ペーストするのに比べたら雲泥の差だ。そうそう、ExcelはUnicodeにもきっちり対応している。
自動組版というと、大がかりなデータベースを構築するようなイメージがある。カタログなどを作る場合は確かにそういうソリューションも必要だが(ビーワークスや他社もそういう事例を数多く発表している)、テキストを流し込むタイプの自動組版なら、InDesignとExcelを組み合わせるだけでもかなり効率化できる。ビーワークスでは、ハシラ(欄外に入れる章タイトルや見出しなど)を入れるプラグインも開発してさらにDTP作業の効率を上げているそうだ。
その他の自動組版ソリューションで興味を引かれたのが、フレイマーグループの事例。同社の組版システム「WAVE」は何とCADソフトのAutoCAD上に構築されている。自動組版を行う際も、CADソフトならではの細かい指定が行えるのだそうだ。
当然のことながら、素のAutoCADできっちりとした組版ができるわけではなく、あくまで同社が開発したWAVEがあってのソリューション。それにしても意外なソフトがDTPで活躍しているものだ。