脳についてのエキサイティングな仮説
9月 18th, 2005ジェフ・ホーキンスはPDA「Palm」の生みの親として知られているが、彼は脳の研究者としての側面も持っている。むしろ脳研究こそ一番のライフワークであり、Palmで稼いだ金で自分の研究所まで作ってしまった。愛・地球博(愛知万博)でパビリオンを待っている間に彼の『考える脳 考えるコンピューター』を読んだのだが、万博会場にいる間、一番知的興奮を味わえたのは実を言えばこの本だった(笑)。
ホーキンスは、従来のニューラルネットワークによるアプローチで人工知能を実現することはできないと断言し、「記憶による予測の枠組み」という理論を提唱する。大脳新皮質では感覚器から入力されたさまざまなパターンが普遍的な表現として記憶され、それを元に常に予測が行われている。これこそが知能の本質だという。大脳新皮質が世界をどう捉えているのか、そしてそれはどのように実現されているのか。私は研究者でも何でもないので理論の妥当性について判断できないが、このあたりの説明は今まで読んだどの解説書よりも平易で説得力があった。
注意しておきたいのは、彼が目指すのは喜怒哀楽を備えた「アンドロイド」ではないということ。大脳新皮質で行われている知能のプロセスを半導体で実現し、新しい産業を興すことが彼の目的なのである。
科学読み物としても一級品だが、いわゆる文系人間(こういう分け方は好きじゃないのだけど)にもいろいろと得るところの多い本ではないかと思う。例えば、大脳新皮質は階層構造をなしており、パターンを普遍化する過程も階層的に行われるというあたり、効率的な学習方法や人の行動を理解するヒントになるのでは。
よく「論理的な考え方」などといったりするが、この論理も大脳新皮質の構造に由来するのである。人間の知能の本質について考えることは、人工知能研究という特定の分野だけでなく、政治、経済、教育、歴史など、人間を対象としたあらゆる分野で大きな意味を持つだろう。
6月 29th, 2007 at 09:03
もしよろしければ、脳内構造に関しての私の解釈を批判していただけませんか?